「私、あの人と付き合うことになったの」
「そうよかったね、おめでとう」
私は今、ちゃんと笑えてるのだろうか。
妹の恋を応援しなくちゃいけないのよ。
ぎゅっと自分のこぶしを握り締めているため、爪が食い込んで痛い。
笑え、笑え、と自分に暗示をかける。
妹の恋人は私の元彼だ。
2つ年上の、私の同級生だった。
高校2年生の時に告白して、大学卒業まで付き合っていた。
高校の桜の木の下で告白すると、思いが叶う。
そう聞いて彼を呼び出して告白して、思いが叶った、そう思った。
大学卒業して、就職先が離れてしまったため疎遠になっていて、
1年後、彼から別れ話をされてしまったのだ。
その2年後、妹と付き合うとは・・・。
「あいつ気づいてなさそうだった? 俺があいつとお前2股かけてたって」
「ふふふ、お姉ちゃん。全然気づいてないよ」
帰ろうと自室を出て、一階に降りてリビングに入ろうとしたときに
そんな声が聞こえてきた。
ふと思い出した。
3年生になってから受験に集中したいから、とあまり逢えなくなったことを。
そうか、あの頃から浮気していたのか・・・。
ちいさく「ふふふふ」と笑い声をこぼしてゆっくり自宅を後にする。
あの男はまたきっと浮気するだろう。
妹もあの男も地獄に落ちればいい。
そう簡単に初恋は実らない、そしてジンクスさえも憎いのだ。